スキンケアについて

スキンケアについて

化粧品とは

 化粧品とは英語でCosmeticsであるが、化粧はmake-upとなり、ブリタニカ国際百科事典によれば、「人間の顔を中心として首、手、足などの表面に直接、化粧料を施し、美化すること。転じて広義には、物の外観を美しく飾ること。化粧と美容とはほとんどほとんど同義に用いられる。

 1970年代初頭、高度成長、バブル経済の到来と言われ、賃上げ・ベースアップは20%~40%という、信じられない状況下であった。また、化粧品は他の産業と違い、景気に左右されない。戦時中でも化粧品は売れたということであった。しかし、1970年代の第一バブル景気、その後の停滞、そして2000年代の第二次バブル景気、その直後の主に中国人を中心としたインバウンド効果等、他産業ほどではないにしろ、その時代の経済状況に大分左右されるようになってきた。その大きな要因としては、景気だけでなく、化粧品産業独特の構造があると言われている。

 1980年代頃までは化粧品産業はデパート、専門店を中心に販売する制度品メーカー、スーパーマーケット、やドラッグストアーを中心に販売する一般メーカー、各家庭を訪問し販売する訪販メーカーなどに区分けされていた。それらを販売するメーカーもある程度限定されていた。今やそのような垣根はなくなり、一つのメーカーで複数の販売チャンネルを有している。

【法律的基準】

・化粧品
人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために使用されることが目的とされているもの。人体に対する作用が緩和なもの。

・医薬部外品
積極的に治療に用いられるものではなく、吐き気等の不快感、あせも、ただれ等の防止を目的として使用されるもの。また、口臭、体臭、脱毛の防止、育毛、除毛等の美容目的に使用されるもの。人体に対する作用が緩和なもの。

・医薬品
病気(疾病)の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされているもの。

 不老不死は始皇帝の時代から人類の夢とされてきた。そのころから数えたら、いったいいくつの若返りの薬がつくられてきただろう。とはいえ、科学的な手法によってその効果が確認されるようになったのは、この数十年のことである。地道な研究によってひとつひとつの老化現象のメカニズムが明らかにされるとともに、実際に効果のあるアンチエイジングテクノロジーが開発され、化粧品にも応用されていくだろう。

古くから使われてきた石鹸

 バビロニア時代の発掘現場で見つかった約5千年前の粘土の円筒には、ある種の石鹸とその作り方を記したものが入っていた。紀元前1500年ごろのエジプトの記録には、「脂肪と木の灰から石鹸が作られる」と書かれているし、ローマの伝説では、サポーと呼ばれる丘の下を流れる川で洗濯していた女性たちが石鹸を発見したことが「Soap」の語源だとされている。

 当時は、ほんのひとかけらを加えるだけで汚れをきれいに落とし、水に溶けない油を乳化・可溶化して香料やクリームにする石鹸は、まさに衝撃的な先端材料だっただろう。一口に石鹸といってもさまざまな分子があり、それぞれに個性がある。化粧品業界では、長年の経験に基づいてその個性に合った利用の仕方がされている。

 ヤシ油からつくられる炭素数12のラウリン酸(12:0脂肪酸)や14のミスチリン酸(14:0脂肪酸)は水に溶けやすく、起泡性・洗浄力に優れているため、固形せっけんやボディーソープの主基剤として用いられる。とくにこれらの石鹸は、きめが細かく安定な泡を形づくることができるため、クリーミーでもちもちした触感のボディーソープやハンドソープを調製するために用いられる。また、牛脂に多く含まれているステアリン酸(18:0脂肪酸)は炭素数18で、比較的アルキル鎖長が長いため水にあまり溶けず、洗浄力もあまり高くないが、油水界面で硬い界面膜を生成するため、適量を加えてエマルションや泡を安定化させる添加剤として利用される。一方、アルキル鎖中に二重結合を含む不飽和脂肪酸も化粧品に配合される。なかでもオリーブ油から得られるオレイン酸(18:1脂肪酸)は、炭素数はステアリン酸と同じ18だが、二重結合を含むため融点が低く、水にもよく溶けるため、乳液やクリームの流動性を高めたり、肌なじみを高めるために用いられる。

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界面活性剤とは

 多くの化粧品には界面活性剤が配合されている。メイク落としのような洗剤料だけでなく、スキンケア化粧品やメイクアップ化粧品でも、スキンケア成分や香料の多くは油剤で水にほとんど溶けないため、これらを乳化・可溶化したり、鮮やかに発色する顔料を分散させるのに必要なのだ。

・アニオン性界面活性剤
親水基が負に帯電した石鹸や硫酸エステル型の界面活性剤は、乳化性・起泡性に優れているために起泡性の洗浄料などに配合される。

・カチオン性界面活性剤
親水基が正に帯電したアンモニウム型界面活性剤は、リンスやハンドソープに配合される。髪の毛を滑らかにしたり、殺菌力を発揮するためである。

・ノニオン性界面活性剤
洗浄剤だけでなく、敏感肌用の化粧品に用いられる。毒性や皮膚への刺激が低いためである。

・両性界面活性剤
分子の中にアニオン性の官能基とカチオン性の官能基が存在するもので、べタインと呼ばれるものが広く使用されている。アニオン性界面活性剤と組み合わせることで泡を安定化することから、シャンプーやボディーソープに配合されている。

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保湿

 クリームやローションなどのスキンケア化粧品を選ぶとき、「保湿」は一番大事なポイントです。そもそも皮膚のもっとも重要な役割のひとつは、水がが体内から失われるのを防ぐ「バリア機能」だと言われています。

 皮膚の最表面には、「角層」と呼ばれる数十マイクロメートルの薄くてしなやかな層が存在する。角層はやがて剥がれて垢になる運命だが、実はここにバリア機能を発揮して大切な水を体内に留めるためのしくみが秘められている。その一つが天然保湿因子である。角層にはセリン、グリシン、アラニンといった遊離アミノ酸をはじめ、乳酸、ピロリドンカルボン酸、尿素など保水性の高い化合物が含まれており、皮膚の潤いを保っていることが古くから知られていた。そこでスキンケア化粧品を調製する際には、しばしばこれらの成分が保湿剤として配合される。実際にこれらの成分によって皮膚内からの水分蒸散が抑えられ、乾燥が防止されることがさまざまな研究者によって確認されている。

 また、角層の表面には皮脂から分泌された皮脂膜が存在する。皮脂は主にトリグリセリド、ワックスエステル(高級脂肪酸と高級アルコール)、遊離脂肪酸、スクワレンなどの油脂によって構成されているが、バリア機能や保湿機能への寄与は大きくないとされてきた。しかし、最近では、皮脂中のトリグリセリドが分解されて生成したグリセリンが保湿機能に関与しているのではないか、という報告がされている。また、ワセリンやラノリンなどの油脂を皮膚の上に塗ると、閉塞剤として働いて皮膚からの水分の蒸発を抑制することから、医薬用の保湿剤として広く用いられています。

 角層の構造は、レンガのように固い角層細胞を柔らかい細胞間脂質がつないだ「レンガ・モルタル構造」で、モルタル部分にあたる細胞間脂質がバリア機能を発現する上で極めて重要です。細胞間脂質は、セラミド、コレステロール、脂肪酸の混合物で、これらの脂質が形成する液晶構造が壊れると、水分の蒸散を防ぐバリア機能が著しく低下するという。なかでもセラミドは細胞間脂質のラメラ構造を安定化するキーマテリアルであることが知られており、角層中のセラミドの不足がアトピーの性皮膚炎の病因であるという指摘がされている。

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美白とは

 白い肌は高貴さや富、権力の象徴とされており、古代ローマの人々は、ロバの乳でパックしたり、ミルク風呂に入って肌を白くしようとしていたといわれる。クリームやローションを塗り続けるだけでメラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐことができるというのは、なんだか不思議でちょっとした手品のようだ。ヒトの肌の色は、皮膚内部に存在するメラニン色素と、血液中のヘモグロビンやカロチンによって決まるが、なかでもメラニン色素は最も強い影響力をもつ。人体を紫外線から守るこの生体色素ができるプロセスはちょっと複雑だ。メラニンの生成プロセスは、アミノ酸のひとつであるチロシンから出発する。チロシンは「チロシナーゼ」という酵素によってドーパ、ドーパキノンに変換される。ドーパキノンは自動酸化によってドーパクロームとなり、さらにそれがポリマー化してユウメラニンやフェオメラニンといったメラニン色素となる。これらの一連の反応のなかで、チロシナーゼによる酸化反応はメラニン生成の鍵となるステップで、この反応が起こらなければメラニンは生しない。

 それでは美白剤を塗ると、どのようにしてシミ・ソバカスが防げるのだろうか。2価フェノールであるハイドロキノンは、美白効果を示すことがわかったはじめての美白成分のひとつである。ただし、発がん性の可能性が指摘されているが、その美白力はなかなかのもだという。ハイドロキノンは、チロシンの酸化反応を触媒するチロシナーゼの働きを阻害することで美白効果を発現する。

 コウジ酸、アルブチン、エラグ酸など、現在実用化されている美白剤の多くがこのチロシナーゼ活性阻害によって美白効果を示す。その他、例えばキク科植物のカミソツレ(カモミール)のエキスは、「エンドセリンブロッカー」として働いてメラニン色素をつくれなくしている。紫外線を浴びると皮膚内のケラチノサイトからエンドセリンという物質が放出され、それがきっかけとなってメラニン色素の産生が始まるが、このエキスはエンドセリンによる情報伝達プロセスを阻害してメラニンの生成を抑制する。

 また、皮膚の炎症を引き起こし、紫外線による色素沈着に関与するプロスタグランジンという生理活性物質がある。この物質はトラネキサム酸によって産生が抑制されて、メラノサイトのチロシナーゼ活性が低下する。さらに、ベニバナ油に含まれるリノール酸も美白効果を示す。この必須脂肪酸はチロシナーゼの分解を促進することで、メラニンの生成を抑制している。

紫外線を防げるの?

・紫外線の影響 

 紫外線が当たると、私たちの身体を形づくる細胞にいくつかの障害が引き起こされる。第一の障害は、デオキシリボ核酸(DNA)やタンパク質が光吸収したときに起こる直接的な作用である。例えば、DNAにおいて塩基であるチミン同士やチミンとシトシンが隣り合わせに並んでいると、UVB(波長290~320nm)やUVC(~290nm)の紫外線領域の光によって励起されたピリミジン塩基が結合し、「ピリミジンダイマー」が生成する。第二の障害は紫外線が産生する活性酸素が引き起こす間接的な作用である。UVA(340nm~400nm)と呼ばれる紫外線が照射されると、一重項酸素やスーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルなどの活性酸素が発生し、真皮中の繊維状タンパク質やコラーゲンを変性させる。さらに紫外線照射によって、免疫機能を司るランゲルハンス細胞が障害を受けることも示されている。

 私たちの身体には、これらの障害に対する防御システムがある。例えば紫外線によってDNAが変性したとしても、異常な塩基部分を切り出して正しい塩基配列に戻す除去修復が行われるし、抗酸化力をもつβカロチンやグルタチオンペルオキシダーゼという還元酵素にとって活性酸素はある程度消去される。しかし、夏の強い日差しによる障害は、これら回復機能をもってしても防御しきれないため、日焼けやシワ、たるみの生じる光老化、さらには皮膚がんが引き起こされる。

・紫外線から身体を守る二つの成分

 紫外線から身体を守り、日焼けを防ぐために、サンスクリーン、いわゆる日焼け止めが開発された。古代には、植物の抽出液や顔料が身体に塗られていたという。現在、私たちが使用しているサンスクリーンには、紫外線を吸収する紫外線吸収剤と、光を散乱して皮膚に到達しないようにする紫外線散乱剤が配合されている。紫外線吸収剤には主にUVAを吸収するt-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息酸へキシル、主にUVBを吸収するオクトクリレン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、両方を吸収するオキシベンゾン類がある。

 これらの有機系の紫外線吸収剤は、紫外線エネルギーを吸収して熱エネルギーに変換することで、紫外線が皮膚に到達することを防いでいる。分子構造によって極大吸収波長や吸光係数が異なるだけでなく、油への溶解性も異なるので、商品のコンセプトや要求される機能によって使い分けられている。また、毒性がなく安全性が高いこと、熱・光・化学的に安定であることに加えて、皮膚に塗布したときに透明性が高く、不快感やにおいがないことも求められる。

 また、紫外線散乱剤として、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(CeO2)があげられる。これらの無機系の紫外線散乱剤は、屈折率が高く紫外線を効果的に散乱するだけでなく、バンドギャップ間遷移によって紫外線を吸収して皮膚を紫外線から守ってくれる。一般に紫外線散乱剤は紫外線吸収剤よりも皮膚への刺激が少なく、かぶれなどが起きにくいため、子供用のサンスクリーンには紫外線散乱剤だけを配合する場合が多い。ただし、散乱剤の粒子サイズが大きかったり、凝集したりすると、白浮きしてしまって美容上よくない。そこで、数十ナノメートルのナノ粒子を水や油にきれいに分散させるため、粒子の表面処理や界面活性剤、機械的分散技術が開発されてきた。紫外線から身体を守るだけでなく、塗り心地をよくし、化粧としての見栄も美しいサンスクリーンに仕上げていくことも重要である。

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シワを改善

 年齢を重ねることによって、私たちの身体にはさまざまな変化が訪れる。髪の毛や歯が抜け、視力や聴力は落ち、記憶力も衰えたりしてくる。このようなシグナルは、皮膚の上にもシワ・シミ・タルミとなって現れる。人が他人の年齢を判断するときには、シワがひとつの手がかりとなっていることが確認されており、皮膚の表面に存在するこの繊細な溝は、顔の印象を左右する最も重要なファクターと言える。シワの形状は30代前半で根本的に変化するという。すなわち、若いころは皮膚の最表面の角層だけが変化していたことに対して、この世代を超えると、さらに深い表皮、真皮にまで影響が及ぶために、シワは一気に深く大きくなってしまうのである。

 ではそもそもシワはなぜできるのだろうか?比較的柔らかい物体の表面に比較的硬い薄膜が密着していると表面方向への圧縮応力によって表面層が押し上げられ、波状のシワが発生する。そしてシワの深さや波長は、薄膜の厚さと薄膜と柔らかい物体のYoung率の比によって決まる。すなわち、硬い薄膜が厚く、柔らかい物体より柔らかいほどシワの幅は広く、深くなるのだ。この法則を頭に入れてあらためて考えてみると、人の皮膚はシワが発生するのにうってつけの素材といえる。人の皮膚は物理的・化学的な特性の異なるいくつかの層からなっている。人体を覆う表皮の最表面には、角層と呼ばれる死んだ細胞からなる厚さ10~20μmの薄膜が存在する。この弾性率が10の5乗から6乗Nmm-1で、その下部に存在する表皮・真皮、皮下組織の数倍硬い。一方で、真皮の主成分は水だが、この水が繊維状タンパク質であるコラーゲンと、コイル状タンパク質であるエラスチンによって形成されたネットワークに保持されてゲル状となるため、しなやかかつ弾性的な皮膚の特性が現れる。

 ところが年を取ると、加齢や内分泌系の変化などの内的要因と紫外線、酸化ストレスなどの外的要因によって、コラーゲン繊維、エラスチン繊維が減少したり変性したりする。日光があたってシワになった場所は、その周辺に比べてエラスチン繊維の量が数分の1に低下するだけでなく、変性した繊維が存在することを見出した。これらの繊維の変性によって真皮は柔らかくなり、シワができやすくなる。年齢を重ねると目尻の皮膚の弾性が下がってシワができるため、皮膚表面の凹凸の度合いが高まるという。コラーゲン繊維やエラスチン繊維の減少と変性は、加齢や光老化によってこれらのタンパク質の合成反応が阻害されたり、分解酵素の発現が亢進されたりするためだといわれている。これらの要因は、角層を厚くし、その水分量を低下させ、表皮と真皮の接合部の平坦化を引き起こす。この物理的・形態学的変化が皮膚の変形に対する復元力を低下させ、シワが発生するものとされている。

・シワはなぜ起こるのか
 
 年齢を重ねることによって、私たちの身体にはさまざまな変化が訪れる。髪の毛や歯が抜け、視力や聴力は落ち、記憶力も衰えたりしてくる。このようなシグナルは、皮膚の上にもシワ・シミ・タルミとなって現れる。人が他人の年齢を判断するときには、シワがひとつの手がかりとなっていることが確認されており、皮膚の表面に存在するこの繊細な溝は、顔の印象を左右する最も重要なファクターと言える。シワの形状は30代前半で根本的に変化するという。すなわち、若いころは皮膚の最表面の角層だけが変化していたことに対して、この世代を超えると、さらに深い表皮、真皮にまで影響が及ぶために、シワは一気に深く大きくなってしまうのである。

 ではそもそもシワはなぜできるのだろうか?比較的柔らかい物体の表面に比較的硬い薄膜が密着していると表面方向への圧縮応力によって表面層が押し上げられ、波状のシワが発生する。そしてシワの深さや波長は、薄膜の厚さと薄膜と柔らかい物体のYoung率の比によって決まる。すなわち、硬い薄膜が厚く、柔らかい物体より柔らかいほどシワの幅は広く、深くなるのだ。この法則を頭に入れてあらためて考えてみると、人の皮膚はシワが発生するのにうってつけの素材といえる。人の皮膚は物理的・化学的な特性の異なるいくつかの層からなっている。人体を覆う表皮の最表面には、角層と呼ばれる死んだ細胞からなる厚さ10~20μmの薄膜が存在する。この弾性率が10の5乗から6乗Nmm-1で、その下部に存在する表皮・真皮、皮下組織の数倍硬い。一方で、真皮の主成分は水だが、この水が繊維状タンパク質であるコラーゲンと、コイル状タンパク質であるエラスチンによって形成されたネットワークに保持されてゲル状となるため、しなやかかつ弾性的な皮膚の特性が現れる。

 ところが年を取ると、加齢や内分泌系の変化などの内的要因と紫外線、酸化ストレスなどの外的要因によって、コラーゲン繊維、エラスチン繊維が減少したり変性したりする。日光があたってシワになった場所は、その周辺に比べてエラスチン繊維の量が数分の1に低下するだけでなく、変性した繊維が存在することを見出した。これらの繊維の変性によって真皮は柔らかくなり、シワができやすくなる。年齢を重ねると目尻の皮膚の弾性が下がってシワができるため、皮膚表面の凹凸の度合いが高まるという。コラーゲン繊維やエラスチン繊維の減少と変性は、加齢や光老化によってこれらのタンパク質の合成反応が阻害されたり、分解酵素の発現が亢進されたりするためだといわれている。これらの要因は、角層を厚くし、その水分量を低下させ、表皮と真皮の接合部の平坦化を引き起こす。この物理的・形態学的変化が皮膚の変形に対する復元力を低下させ、シワが発生するものとされている。

・シワを目立たなくするテクノロジー

 シワを目立たなくするために、さまざまなテクノロジーが提案されてきた。なかでも最も広く知られているのが、レチオール(ビタミンA)が代謝されてできるレチノイン酸である。実際にレチノイン酸によって、真皮のエラスチン繊維が破壊されて塊になる日光弾線維症を軽減したり、コラーゲン繊維の構築プロセスが正常化されることが報告されている。

 酸化ストレスの原因となる活性酸素やフリーラジカルを消去する抗酸化剤もアンチエイジング化粧品の成分として用いられている。たとえばカロチノイドの一種であるアスタキサンチンは紫外線の照射によってコラーゲン繊維を減少させるマトリックスメタロプロアーゼ(MMP)類やエラスチン分解酵素であるエラスターゼの産生を抑制する。糖尿病や高血圧の改善・予防効果が知られている。コエンザイムQ10を1%配合したクリームを5ヵ月連用したところ、シワの大きさや数が減少したという報告もある。

 また美容外科的なシワ治療も行われている。コラーゲンたヒアルロン酸を皮膚のへこんだ部分に充填剤として注入する。額や眉間、目尻や鼻唇溝(ほうれい線)にできた深くて目立つシワが対象となる場合が多いが、傷跡や手術跡を改善するために施術がなされる場合もある。ボツリヌストキシン製剤は表情筋の動きを制限することによりシワを治療する。神経と筋肉の接合部の刺激伝達を遮断することで効果を発揮するが、3~6ヵ月で周囲の神経に筋肉が入り込み、筋肉の動きが再開する。

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にきびについて

・ニキビのメカニズム

 ニキビは、皮膚科学の世界では「尋常性ざ創」と呼ばれており、顔や胸、背中の毛包に付随している脂線の慢性的な炎症の疾患と位置付けられている。10~30代の青年期に多く見られること、酸素のないところを好む嫌気性のグラム陽性菌であるアクネ菌が関与していること、そして食事やストレスなどの外的因子も関与していることは一般的に広く知られている。さらに、春期になり、アンドロゲン(男性ホルモン)の影響によって、皮脂の分泌が多くなると、毛包の内部にはアクネ菌が増殖する。人の皮膚上に棲む常在菌のrRNAの塩基配列を解析した結果、ニキビの有無に関わらず、アクネ菌はすべての被験者の皮膚上で棲息していたが、特定の株のアクネ菌がニキビの有無と関連性が高いことが報告されている。

 アクネ菌は脂質を構成するエステル結合を加水分解するリパーゼを産生し、皮脂中の中性脂肪の脂肪酸とグリセリンへの分解を加速する。遊離脂肪酸の塗布によってケラチノサイトが刺激され、角化が引き起こされることが確認されており、その結果、毛孔内に角層と皮脂成分からなるコメドという塊が貯留することになる。このコメドは「白ニキビ、黒ニキビ」と呼ばれるざらざらした発疹で、これらが炎症を引き起こすと「赤ニキビ」という炎症性の発疹となる。

 ニキビが炎症するプロセスにはいくつかの経路があり、なかなか複雑である。まず、アクネ菌や皮脂から産生したオレイン酸などの遊離脂肪酸が毛包の上皮細胞のToll様受容体を刺激してサイトカインを分泌させ、炎症を引き起こす。ここで、Toll様受容体とは細菌やウィルスの特徴的な分子パターンを感知して自然免疫を作動する受容体タンパク質であり、サイトカインとは細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間相互作用に関与する
生理活性物質をいう。また、毛包の上皮細胞のToll様受容体は皮脂から産生された遊離脂肪酸のうちパルミチン酸によってもサイトカインを分泌して炎症を引き起こすことが知られている。また、皮膚表面で産生される活性酸素によって炎症が引き起こされる可能性も指摘されている。

・ニキビを防ぐ有効成分

 ニキビ発生メカニズムを参考にしながら、ニキビを防ぐためのさまざまな有効成分が探索され、化粧品に配合されている。まず最初にあげられるのが皮脂分泌亢進を抑制する成分である。これまでに、アンドロゲンの作用を抑制する植物抽出物がスクリーニングされて化粧品成分として利用されている。次にコメドの発生や炎症を引き起こすアクネ菌に対して作用する成分で、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、グルコン酸クロルヘキシジンなどの抗菌成分が利用されている。

 またこれら以外にも、リパーゼ阻害作用やヒアルロニターゼ阻害作用(ヒアルロン酸の分解酵素であるヒアルロニターゼの働きに対する阻害効果)を示す甘草抽出液を配合した製剤について検討がなされている。そして、毛包部における角化に対して作用するサリチル酸、レゾルシン、硫黄の配合があげられる。これらの成分には角質剥離作用があり、毛孔を塞ぐ角質を除くことが期待される。最後に、炎症を抑制するグリチリン酸類、グリチルレチン酸類、アラントイン、ε-アミノカプロン酸などの一般的な抗炎症成分である。これ以外に活性酸素の除去による抗炎症技術も検討されている。

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育毛剤のメカニズム

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・毛髪が伸びるメカニズム

 人の毛髪は、完全に成長すると約90cm、場合によっては150cm以上になるが、なかには限界を超えて毛髪が伸び続けることもあるという。毛髪が失われる脱毛症は、美容の上の問題として取り上げられることが多いが、一方で毛髪が過度に伸びすぎる多毛症も、ある種の異常な状態と捉えられている。毛髪はどのようにして伸びるのだろうか。毛髪のうち、皮膚表面から突出している部分は毛幹部、皮内に埋没している根本の部分を毛根部と呼ぶ。毛幹部は角化した、いわば死んだ細胞であるのに対して、毛根部は生きている。すなわち、毛根部に存在する毛母部が活発に分裂と角化を繰り返すことによって毛髪が形成されるのだ。一方、毛根部には毛乳頭細胞と呼ばれる細胞も存在し、毛細血管から栄養分を取り込み、毛母細胞に供給する役割を担っている。実は、この両者の間には相互作用が存在しており、それによって毛髪の成長を調節しているといわれている。その証拠として、ラットのひげ毛包の下部1/2を切除し、その直下に培養した毛乳頭細胞のペレットを移植したところ、毛球部が再生し、毛幹部が発生したことがあげられる。

 毛髪は成長しては休止し、脱毛するという周期を繰り返しており、これを「ヘアサイクル」という。人の場合、1本の毛髪が成長する成長期が5~6年続いたのち、成長を停止して毛球部が委縮していく退行期、安全に成長が停止して毛根が退縮する休止期となり、数ヶ月後には抜け落ちてしまう。ただし、多くの場合、この時点ですでに新毛が発生しており、1日に数十~百本程度の毛髪が抜けても、頭部の毛髪は維持されるので心配することはない、ところが、このヘアサイクルが回らなくなり、成長期の毛髪が維持できなくなると脱毛症の症状が見られる。

 このとき、男性の場合は頭頂部から前頂部の毛髪が太毛から徐々にうぶ毛化する「男性型脱毛症」が、女性の場合は頭全体の毛髪密度が低下する「女性型脱毛」が起こることが多い。そのため、男性型脱毛を改善するには発毛を促すよりもうぶ毛を太くすることが、女性型脱毛では細くなった毛髪を太くすることに加えて、休止期にとまっている毛髪を活性化することが重要だと言われている。

・様々な育毛成分

 育毛剤とは抜け毛を予防し、発毛を促すために用いるもので、頭皮に機能を正常化したり、血液の循環を良好にすることで、発毛・育毛を促進したり、脱毛を防止したりすることができる。一般に、薬効成分の種類や配合量、効果・効能によって「ふけ、かゆみを抑え頭皮を健やかにする」ことが謳える化粧品、「毛生促進、発毛促進、育毛、養毛、薄毛、ふけ、かゆみ、脱毛の予防」と「壮年性脱毛症における発毛、育毛および脱毛進行予防」が認められる医薬部外品・一般用医薬品に分類される。一言で「育毛剤」といっても、薬機法上はそれぞれがこれらのどれかに分類され、効果、効能の範囲が明確に分けられているのだ。

 これらの育毛剤にはさまざまなタイプの成分が配合されている。毛根、とくに毛乳頭細胞の活動を活発にする細胞賦活作用によって毛髪の成長を促す有効成分として、t-フラバノン、6-ベンジルアミノプリン、ミノキシジル、アデシンがあげられる。t-フラバノンは、西洋オトギリソウに含まれている天然物アスチルビンの効果をさらに安定させるために構造が類似する化合物を分子設計して開発したなかで見いだされた育毛成分である。薄毛が進行している状態では、毛乳頭細胞でTGF-βというタンパク質が産生されており、TGF-βが毛母細胞に作用すると毛母細胞の分裂が抑制され、毛髪の成長を妨げられるという。その結果、ヘアサイクルは成長期が短くなって退行期、休止期に誘導され、抜け毛の数が増え、髪は短く細くなる。

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