熱について

熱について

 温度とは、「物体の温かさ、冷たさを示す度合」で、長さと同じように日常生活では不可欠な尺度として使用されていますが、温度の目盛りはどのように決められたのでしょうか?

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温度は経験から決められた

 中世の欧州では羊は生活に欠かせな食料源であったことから、大切にされてきました。当時の羊の健康状態を判断するのには羊の体温を常にモニターしていたようで、体温計がないわけですから、手のひらが温度センサーとして用いられていました。
また、当時の漁師は小舟に乗って北海周辺で漁をして生活していましたが、海の氷結温度が最大の関心事でした。
 
 氷結から解水まで海にはでられない。また無理をすると船が氷で閉じ込められてしまう大事となります。そこで、その状態をある特定な温度の基準にすべく、近代科学が発達する18世紀の初め頃にファーレンハイトによって、羊の体温を100度(℉)、海水の氷結温度を0度(℉)として、その100等分を1度(℉)として、華氏温度が定義され温度計が作られました。この温度表示が熱を理解するための出発点となります。 華氏温度は日常生活に便利であるために、現在でも先進国である米国において天気予報でもなお使用されています。
 
 それでも、科学的な観点からがは、不便さがあり、華氏温度が発明されてから30年後の1742年に華氏温度さらに厳密な科学的根拠を与えようとして、
どこにでもある水に注目したセルシウスは新たな温度の尺度を提案しました。水の凍り始める温度を0、水の沸騰する温度を100として、その間を100等分してその温度を1としました。この温度の単位を摂氏(℃)として定義して、どこでも誰でも経験できる温度の尺度が決められました。

 水は生活に不可欠であるばかりでなく、1立方センチの容積で1gであること、水1gの温度を1℃高めるための熱量を1calとして定義され、水の比熱が1cal・g-1・℃-1という値が定義されることにもなりました。 現在では世界的に摂氏温度℃が定着していますが、さらなる科学技術の発達の中で摂氏温度でも不便さが増してきました。そこで、世界的な基準温度として、SI単位が導入され、絶対温度Kが採用されることになりました。単位をKとして、ケルビンで表すよう1968年に国際的に合意されました。熱エネルギーQを定義する際、熱エネルギーは0℃でも、-100℃でも存在しています。ところが、-273.16℃になるとエネルギーが存在しない状態になることが明らかになりました。熱エネルギーが存在しない状態での温度を0Kとして、そこから1Kごとに目盛りを付けたわけです。

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熱とはエネルギーです

 理化学辞典に熱とは、「温度が異なる2つの物体が接触するとき、高い温度の物体から低い温度の物体に移動するエネルギーをいう」と示されています。エネルギーはいろいろな形態で存在しており、熱はそんないろいろな形態のうちのひとつです。運動エネルギー、電気エネルギー、光エネルギー、そして熱エネルギー。他にも様々な形態で、エネルギーは存在しています。 

 エネルギーの単位は、【J】(ジュール)です。どんな形態のエネルギーでも、その量の大小はこの単位で語ることができます。では、1Jのエネルギーとはどのくらいの仕事ができるのでしょうか。1Jのエネルギーは、1Nの力で物体を1m移動させることができます。地球上で約102gのボールをもっているとき、下の方向にかかる力が約1Nです。このボールを1mだけ上に持ち上げましょう。このとき、あなたの腕は1Jのエネルギーを使ったことになります。また、1Jのエネルギーは、1gの水の温度を約0.24℃上昇させることができます。

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熱の移動手段は3通りだけ

 熱エネルギーが移動する手段は、3つの方法しかありません。「伝導」「対流」「放射」だけです。「伝導」は金属やプラスチックなどの個体の中を熱が徐々に伝わっていく現象で、物質は移動しません。壁の中をじわじわと伝わっている熱の移動が伝導です。

 熱の伝わりやすさ数値で表す指標が「熱伝導率」です。数値が大きいほど、熱を伝えやすい物質です。単位は【W/(m・K)】です。熱伝導率の意味を言葉で書くと、「長さ1m、断面積1㎡の材料があって、その両端の温度差が1Kのとき、何Wの熱が流れるか」ということです。代表的な熱伝導率を右に列挙してみました。 

 「対流」は熱伝導に物質の移動が加わります。空気や水など、気体や液体の物質に熱が伝導し、その物質自体が移動する現象です。熱エネルギーは物質が蓄えているわけですから、物質が移動すると熱も移動し、大量に熱が運ばれます。 

 「放射」は電磁波による熱移動で、熱の移動に物質を必要としません。太陽のの熱が真空の宇宙空間を隔てて地球に届くのも、この現象です。

温度と状態変化

 物質には個体、液体、気体という3つの状態がありますが、それを物質の3態といいます。個体とは構成する原子や分子の相互の位置関係が一定していて、それらが相互に影響を及ぼしあっている状態をいいます。一方、液体は、個々の原子や分子の熱運動が個体の状態より激しく、それらの相互の位置関係が一定していない状態をいいます。さらに、気体の場合には、原子や分子間に定まった関係がなく、それぞれの原子や分子が限りなく膨張しようとしている状態をいいます。圧力が一定の場合、物質は温度によって状態が変化します。一般に温度が低い場合に個体状態で、温度があがっていくと液体となり、更にあがっていくと最終的に気体になります。

 状態間の変化をあらわす用語には次のようなものがあります。

1.融解:個体かた液体への変化
2.凝固:液体から個体への変化
3.気化:液体から気体への変化
4.凝縮:気体から液体への変化
5.昇華:個体から液体を経ずに気体への変化、またはその逆の変化状態変化を起こす

 温度は物体によって変わってきますが、物質が個体から液体に変化する温度を融点といいます。物体が個体から液体に状態変化するために必要な熱量を融解熱と呼び、その逆の変化で放出される凝固熱と等しくなります。また、物質が液体から気体に変化する温度を沸点と言いますが、液体から気体に状態変化するために必要な熱量を気化熱と呼び、その逆の変化で放出される凝縮熱と等しくなります。

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比熱と熱膨張

 物質に熱量を加えたとき、物質の温度は上昇しますが、その上昇度合いは物質の種類によって変わってきます。物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量をその物質の熱容量と言います。熱容量は、比熱と質量の積になりますので、物質の比熱がわかれば熱容量は計算で求められます。比熱は、単位質量の物質の温度を1℃上げるのに要する熱量になります。ですから、比熱が大きい物質は熱しにくく、冷めにくい物質となります。水は比熱が大きな物質です。

 物質を熱すると、通常は物質の体積は膨張しますが、この現象を熱膨張といいます。膨張する割合を膨張率といい、普通は体積変化に関する体積膨張率で示します。個体の場合には、長さの変化に関する線膨張率を用いる場合もあります。

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断熱材

 熱伝導率が0.1より小さい部材を断熱材と呼びます。断熱材には様々な種類があり、素材としては無機繊維系、発泡プラスチック系、木質繊維系、自然系に分類されます。無機系にはグラスウールやロックウールがあります。グラスウールはガラス繊維を素材としており、日本でも使用されている断熱材です。これらは繊維系のため、水蒸気を通します。

 発泡プラスチック系にはポリスチレンフォームやウレタンフォームなどがあります。近年の高気密、高断熱住宅の断熱材としてよく利用されている断熱材です。どちらの素材も熱を通しやすい性質を持っていますので、素材そのものは断熱材として機能しません。熱伝導率の非常に低い物質空気、これらの断熱材はガラスやプラスチックの空隙に空気が多く存在しているため、熱を伝えにくい材料となっているにです。

 木質繊維系と自然系はエコロジーの意識の高まりにより、注目されている断熱材です。最近では羊毛断熱材の普及が進んでいます。

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熱に関する単位について

熱伝導(λ)( W/ m・ K )1秒間に1m移動する熱量
比熱(J/g・k)1gあたり温度を1度上昇させるために必要な熱量
熱容量(J)ある物体の温度を1度上昇させるために必要な熱量
融点(摂氏(°C)と華氏(°F))
熱融解量(J/g)1gの個体を液体にするのに必要な熱量

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