触媒について

触媒について

 化学産業は、それがなくてはほとんどすべての産業が成り立ち得ないほど重要な産業です。なぜなら化学産業はほとんどすべての産業に必要な材料を提供しているからです。鉄鋼業や化学産業は素材産業と呼ばれることがありますが、鉄はどのように使われているか分かりやすいですが、化学産業が提供する材料は製品のしくみを理解していないと気づかないことが多いです。

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化学産業における触媒とは

 化学産業が用いる原料は、ナフサと呼ばれる石油成分、天然ガス、油脂、食塩、石灰石、空気、水といった天然資源です。これらの粗原料を化学反応によって色々な化合物に変換し、それらをまた反応させるという具合に何段階も経て、それぞれの製品が必要とする機能を持った材料が作られます。これは化学技術が持つ、機能や性能を生み出す無限の可能性といってよいでしょう。

 化学産業は、高機能、高性能な材料・原体を化学プロセスによって経済的に製造する技術を開発し、それを必要とする産業に供給しています。化学プロセスの中で中心となるのは化学反応で、触媒の入った反応器の中で原料となる化合物が目的の化合物に変換されます。そしてこれらの化学反応には必ずといってよいほど触媒が使われています。

触媒とは

 ロシア化学者キルヒホフは、デンプンを水に分散した液体に少量の硫酸を入れて加熱したところ、デンプンが水によく溶ける甘い物質に変化することをみつけました。これは糖の一種で、ブドウ糖と名付けられたましたが、硫酸を加えないで加熱しても生成しませんでした。このとき硫酸自身は何の変化もしていないことも確かめられました。この硫酸が示す不思議な作用に対して、「触媒作用」という言葉を1835年に最初に用いたのは、スウェーデンの化学者ベルゼリウスだと言われていますが、ギリシャ語の「分解すること」を意味する言葉が語源になっていると言われています。

 今日では、触媒とは「少量存在するだけで化学反応を著しく促進したり、特定の反応だけを起こしたりする物質で、反応前後ではほとんど変化しないもの」と定義されます。1894年に初めてこのように定義したのはドイツの物理化学者オストワルドです。

 これまで工業用のエタノールは、ほとんどがエチレンと水を反応させて作られていました。このような反応はそれぞれの分子の組み換えが起こる事で可能となりました。そしてこの組み換えは触媒がなければ上手くいきません。触媒が化学結合の組み換えを促進するのです。

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触媒のしくみ 酸と塩基

 酸とは、プロトン(H+)を相手分子に与える物質です。プロトンとは、水素原子から電子を取り去ったものです。一方、塩基(アルカリ)は、相手分子からプロトンを奪い取る物質です。

 酸が反応分子にプロトンを与えると、反応分子は正電荷を持つイオン(陽イオン)となります。陽イオンは反応性が高く、さらに他の分子と反応して、新しい陽イオンを生成することがあります。この陽イオンは最後にプロトンを放出して電荷を持たない分子となりますが、これが反応生成物です。このように酸により陽イオンが生成して開始される反応を酸触媒反応といいます。

 エステル化は、代表的な酸触媒反応です。酢酸とエチルアルコールのエステル化は、プロトンが酢酸のカルボニル(C=O)の酸素原子に付加して陽イオンを生成することで反応が始まります。

 一方、塩基が反応分子からプロトンを引き抜くと、負電荷を持つイオン(陰イオン)となります。これも反応性に富み、次々と反応を起こし最終生成物を与えることがあります。
このように進む反応を塩基触媒反応といいます。

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触媒の種類 酵素

 触媒という言葉になじみが薄い人でも、酵素といえば身近に感じることでしょう。酵素はタンパク質からできており、中でも消化酵素はよく知られています。多くの栄養素は消化器の中で小さな分子に分解されてから体内に吸収されます。デンプンはブドウ糖まで、タンパク質はアミノ酸まで、脂肪は脂肪酸とグリセリンまでといった具合です。それらの過程でいろいろな酵素が働いています。例えばアミラーゼはデンプンを麦芽糖に変換し、それをマルターゼがブドウ糖に変えます。

 このように物質変換(化学反応)をスムーズに進める作用、それが触媒です。吸収された栄養素は、活動のためのエネルギーとなったり、体を構成する材料になったりしますが、その段階でも多くの酵素が働きます。

 酵素が働くのは動物の体内だけではありません。発酵によって酒や酢、ヨーグルト、味噌、醤油、納豆などいろいろな食品が作られますが、これらはすべて酵素の働きです。例えば、ブドウ糖は酵母の中にある何種類かの酵素の作用でエタノール(酒)と二酸化炭素に変換されます。このように、酵素は生命活動に不可欠であるばかりか、昔から人間の生活に利用されてきました。それは生命活動が化学反応に基づいて、また、化学反応がいろいろなものを生産する基礎となっていることを意味しています。そして必要な化学反応を起こさせる作用を担うものが触媒というわけです。

触媒の生産方法 気相酸化 アクリル酸/MMA

 プロピレンからのアクリル酸合成とイソブデンからのメタクリル酸メチル(MMA)合成は、代表的な選択酸化です。アクリル酸は紙おむつなどに使われる吸水性の原料で、接着剤(粘着剤)の原料などにも使われています。

 プロピレンの3つの炭素はそれぞれ違った形の構造をしていて、アクリル酸の合成ではこのうち3つの水素と結合したメチル基(CH3)が反応します。反応は2段階で行われ、最初、プロピレンと空気を混合して、Mo、Bi、Fe、Coといった複合酸化物触媒と接触させ、アクロレインを合成します。次にアクロレインを空気で選択酸化してアクリル酸にします。ギネスブックにも載った沖縄美ら海水族館の巨大な水槽は厚さ60cmのメタクリル樹脂でできています。この樹脂はMMAを重合して作られます。

 MMAの製造法は1930年代に開発されたアセトンシアンヒドリン法でしたが、1982年に環境にやさしい新製造方法が登場しました。ナフサを分解するときに得られるイソブデンを空気中の酸素で選択酸化して、次に合成したメタクロレンを選択酸化してメタクリル酸とするイソブデン直酸法です。更にイソブデンからMMAを1段で合成する直メタ法も日本で開発されました。

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