発泡体について

発泡体について

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発泡体・多孔質体とはどのようなものか

 多孔質体とは、細かい孔が多数空いている材料のことを指す。
多孔質体の代表的なものに炭やスポンジがあり、孔の内部に物質を蓄える、孔の表面に物質を吸着する、孔のサイズによって通過できる物質・物体を選別する等の機能がある。発泡体には特に、泡が発生することによってできた多孔質体のことである。

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身近な多孔質体

 多孔質構造は強くて軽いということを特徴としている。木材は人類が太古から使用している多孔質体構造である。多数の縦に伸びる孔は仮道管と呼ばれる水を吸い上げるための流路であり、成長するために年輪構造を形成する。木材が水に浮くのは多孔質構造の内部に空気を蓄えているからである。 ホタテの貝殻はハニカムに似た構造で、他の貝に比べて非常に軽い。貝殻の構造は炭酸カルシウムの結晶が少量の有機物で結着されて多孔質構造をなしている。 人の骨は皮質骨と呼ばれる緻密質の外壁の内側に海綿骨と呼ばれる多孔質が結合した構造をとっている。この構造のおかげで人の体重に占める骨の割合はわずか7%である。 このように自然界は進化の過程で重量が軽くて強度が十分にある構造を選んできたのである。我々人類はそのような多孔質体を生活の中で活用してきた。

発泡体の用途

■自動車部品
自動車には重量ベースで10%を超える非常に多くのプラスチックが使用されている。各自動車メーカーでは更なる軽量化のために軽いプラスチックを更に軽くする努力が進められている。軽量化目的の部品以外にもソフトタッチ、吸音、断熱を目的としたものもある。自動車に使われる発泡成形品には射出発泡成形品、押出発泡成形品、発泡ブロー成形品や発泡シートの真空成形品、ビーズ発泡成形品等がある。
 
内装部品では、インスツルメントパネル(インパネ)、ドアトリム、センタークラスター、サンバイザー等を中心に、外装部品等では、エンジンルーム部品、バンパー・エアダクト・ドアキャリア周辺部分に使用される。

■食品容器・包材
断熱性、密閉性、光遮断性や軽量性を活かして発泡製品は使用される。
カップ・トレー、キャップシール、飲料ボトル等である。■輸送・梱包物流分野では発泡製品は非常に多く使われている。軽量で剛性が高い容器が得られることと、衝撃吸収によって運搬する製品の破損を防ぐ効果が高いからである。緩衝材や容器として使用される。

■電気・電子・電線
電気・電子・電線の分野では発泡による光線反射特性や低誘電性を活かした用途がある。反射フィルムや電線被覆などである。

■建材
住宅等の省エネ性能を高めるために屋根裏、壁内部、床、畳下に発泡断熱材が用いられている。

■履物
スポーツシューズの軽量化のために靴底の部分は、昔からEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)の架橋プレス発泡によって製造されてきた。

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発泡体の特徴付ける要素と評価方法

■発泡体の要素・プラスチックの種類

・気泡内部の気泡の種類
 連続気泡・・・内部で気泡が連続している。フィルターのように液体や気体を通す必要があるときや柔軟性、防音性が特徴。
 独立気泡・・・内部で気泡がつながっていない。剛性や断熱性が特徴。
・気泡密度
 単位体積当たりの気泡数
・平均気泡径
・気泡径分布
・独立気泡率
・発泡倍率
気泡密度と平均気泡径から計算、もしくは比重測定からも得られる。
・その他
 発泡プラスチックには成形方法によって気泡が存在しない表層(ソリッドスキン層)を伴っている場合がある。

■プラスチック発泡体の評価方法・密度と発泡倍率

・気泡径と気泡径分布
・独立気泡率と連続気泡率
・曲げ特性
・断熱性

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工業的な多孔質体(発泡体)の製造方法

多孔質構造を持たせる方法には以下のプロセスがある。

1.溶解したガスから気泡を発生させる方法
2.分散させた発泡剤の熱分解や化学反応によって気泡を発生させる方法
3.大きい気泡をせん断で分割する方法
4.フィラーを分散させたプラスチックを延伸することでフィラーとプラスチックの界面に隙間を生じさせる方法
5.プラスチック中に分散させた可溶成分を溶出させる方法

1について
栓を抜いたビールで説明されることが多い。圧力をかけて溶解させたガスを栓を抜いて圧力を開放することで泡を生じさせる。

2について
食品を例にすると重曹とベーキングパウダーを混ぜてケーキを焼く時がそのケースになる。ベーキングパウダーは重曹(炭酸水素ナトリウム)を主成分にして、酒石酸やクエン酸のような助剤が配合された薬剤である。重曹は加熱によって二酸化炭素を発生し、ベーキングパウダーは水が加わることで中和反応が起こって二酸化炭素が発生する。

3について
食品で例示すると卵白を泡立てるときがそのケースとなる。材料に空気を混合し、塗布した後に加熱して硬化させる。

4について
炭酸カルシウムを分散したポリエチレンフィルムを延伸し、ポリエチレンと炭酸カルシウムとの界面を剥離してミクロボイドを生じさせる。

5について
ゴムに水溶性気泡形成剤(塩化ナトリウムやでんぷんなど)を混ぜて成形し洗浄して多孔化する。

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代表的な発泡プラスチック製品

■発泡ポリスチレン(XPS)
ポリスチレンを連続的に押出発泡形成したもの。一般建築、戸建住宅、畳などの断熱材用途。

■発泡スチレンシート(PSP)
ポリスチレンを発泡剤とともに1~3mm厚みで押出して、ロール状に巻き取ったものである。真空成型によりスーパーマーケットなどで食品を包装する食品トレーなどに加工される。

■発泡スチロール(EPS)
ビーズ発泡による発泡ポリスチレン成形品である。発泡剤を含浸させたポリエチレンのペレットを加熱して50倍に膨張させたビーズを金型内に投入し、蒸気で加熱してビーズ間を融着させることで成形を行う。

■発泡ポリエチレン
架橋発泡ポリエチレンシートは耐薬品性、クッション性に優れるため、野球フェンス、断熱防水シート、建築目地等に使用されている。無架橋ポリエチレンシートは複数枚貼り合わせて厚い板状に成形、打ち抜きを行って精密機械運送用の緩衝材として用いられる他、薄肉シート状で表面保護材として使用されている。ネット上に押出した発泡ポリエチレンは果物の包装用に、ビーズ発泡ポリエチレンは耐衝撃性に優れるため、電機、電子機器の梱包資材として多く使用されている。

■発泡ポリプロピレン
無架橋押出発泡シートは段ボール代替や引っ越しの養生に用いられる。架橋発泡シートはクッション材としてPVCや熱可塑性エラストマーと積層されて、自動車の内装材等に使用されている。ビーズ発泡ポリプロピレンは自動車のバンパー等に取り付けられる衝撃吸収部材やサンバイザーに用いられている。ポリプロピレンの射出発泡製品は、自動車のドアトリム、インスツルメントパネル・コアやパレット等の輸送機器に用いられている。

■ビーズ発泡ポリプロピレン
耐熱性と寸法安定性に優れ、自動車用バンパーの緩衝材や家電製品・精密機器の緩衝包装材、自動車のサンバイザー部品にも用いられている。

■架橋発泡ポリプロピレンシート
電子線で架橋した発泡ポリプロピレンシートは自動車内装用表皮材と積層されてクッション層として用いられる。発泡倍率は15~30倍の独立気泡の発泡体である。

■非架橋発泡体ポリプロピレン
厚みが概ね1mm~5mmで発泡倍率が1.3~5倍程度の独立気泡の剛性があるポリプロピレンシートであり、梱包資材等に用いられている。

■発泡ブローポリプロピレン
ブロー成形において発泡させた製品も実用化されている。自動車用のダクトの例を示した。発泡体を軽量化効果と断熱性が活かされている。

■射出発泡ポリプロピレン
射出発泡成形によるポリプロピレン発泡体は自動車部品の軽量化のために多く用いられるようになってきた。自動車のインスツルメントパネルやドアトリム用途等。

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発泡成形

 プラスチックの発泡成形とは、発泡プラスチックを成形して多孔質プラスチックを得る技術である。発泡成形ではない一般的なプラスチック成形では、融かす工程、流す工程、固める工程から成り立っている。発泡成形ではそれらに加えて、発泡性を付与する工程と気泡を発生させて成長させる工程、気泡の成長を停止させる工程(通常は固める工程によって気泡の成長が停止する)が追加される。 

 発泡成形は大きく分類すると、固相発泡と液相発泡に分けられる。固相発泡は「融かす」から「固める」まで先に行い、その後に発泡工程を行う。一方で、液相発泡は「融かす」から「固める」に至る工程と同時進行的に気泡の発生から成長の停止までが起こる。固相発泡には、ビーズ発泡、バッチ発泡、プレス発泡、常圧二次発泡が挙げられる。液相発泡としては、射出発泡、押出発泡、発泡ブローが挙げられる。

発泡剤

■発泡剤の種類と特徴
発泡剤は発泡成形において気泡を形成するためのガスを供給する物質であり、化学発泡剤と物理発泡剤に大別される。また、発泡性マイクロカプセルは物理発泡剤であるが、取り扱いが化学発泡剤に似ている。超臨界流体は物理発泡剤の一つの形態であるが、微細射出発泡成形を理解する上で極めて重要である。

■化学発泡剤
化学発泡剤は有機系発泡剤と無機系発泡剤に分類され、それぞれは更に熱分解型と反応型に分類される。有機系の熱分解発泡剤では、ADCA(アゾジカルボンアミド)、DPT(N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、OBSH(4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)等がよく用いられる。無機系の熱分解型発泡剤には炭酸水素塩と有機塩の組み合わせ等がある。射出発泡成形では重曹(炭酸水素ナトリウム)系発泡剤が好んで用いられる。

■物理発泡剤
物理発泡は、高圧下でプラスチックにガスや超臨界流体を溶解させ、圧力低下あるいは加熱によって溶解度を低下させることによって気泡を生成させる発泡方法である(溶解度は圧力が高いほど、温度が低いほど高くなる)。

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発泡成形の種類

■ビーズ発泡
発泡スチロールの製造に用いられる成型方法として知られており、ポリスチレン以外のプラスチックにも多く用いられている。ビーズ発泡の特長は形状を自由に設計できることと、高倍率の発泡成形品が得られる点にある。ビーズ発泡の工程は、予備発泡、熟成、成形、養生に分けられる。

■バッチ発泡
実験でレベルでも簡単に行えるため、学術研究でも多く用いられている。また、特殊な用途における実生産でも用いられている。予備成形させたプラスチック片を耐圧容器(オートクレーブ)に入れ、発泡剤に浸漬して飽和するまで含浸した後、圧力解放あるいは一度取り出して加熱によって気泡を発生させる発泡成形法である。

■プレス発泡
原料プラスチックと化学発泡剤、架橋剤、架橋助剤を低温でミキシングロール等の混練手法によって混合したシートを作成して、シートを加熱プレスの金型に入れて架橋を進行させながら発泡を行う。

■常圧二次発泡
PP、PE等のプラスチックに化学発泡剤、架橋剤、架橋助剤を混ぜながら押出してシート化し、次工程で電子架橋や化学架橋したシートを製造しておく。架橋シートを加熱炉で発泡させることで発泡シートを得られる。

■発泡ブロー
プラスチックを押出機で押出したパリソンを金型にはさんで空気圧で膨らませる押出ブロー成形と射出成形で成形した試験管形状の成形品を加熱延伸した後に膨らませる射出延伸ブローがある。

■押出発泡
押出発泡成形は発泡性プラスチックを押出機で押し出す成形方法であり、ダイで断面形状を決め、ダイから出たプラスチックが発泡する。

■射出発泡
射出成形のプロセスにおいて発泡性を持った溶融プラスチックを金型内に射出充填することによって気泡構造を持った成形体を得る成形技術である。

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